保育現場ではAIにまだ抵抗があるのか
保育とAIについて考えていると、 「保育の仕事にAIを使っても大丈夫なのか」 「なんとなく不安」と感じる方もまだ少なくないと思います。
実際に、保育現場を対象にした調査を見ると、 AIに対して不安を感じている人がいることが分かります。
2024年に株式会社コドモンが、 同社のサービスを利用する全国の保育施設436件を対象に行った調査では、 生成AIを利用しているという回答は全体の20%でした。
また、生成AIを利用していない人の71.7%が、 保育現場での生成AI利用について 「不安を感じる」と回答しています。
この結果だけを見ると、 保育現場ではAIに対する抵抗感がまだあるようにも見えます。
ただ、詳しく見ていくと、 単純に「AIを使いたくない」ということではないように思います。
不安の中心は「AIを信用してよいのか」
同じ調査では、生成AIを利用していない人が 不安に感じることとして、 「AIが出す情報の正確性・偏り」が69.3%で 最も多く挙げられています。
次に多かったのが、 「保育者の考える時間、問題解決能力の減少」で59%でした。
すでに生成AIを利用している人でも、 「AIが出す情報の正確性・偏り」は50.6%、 「情報漏洩・セキュリティ」は39.1%、 「保育者の生成AIへの依存」は32.2%が 不安として挙げられています。
つまり、AIそのものを嫌っているというより、 「出てきた文章をそのまま信用してよいのか」 「情報を入力して大丈夫なのか」 「頼りすぎてしまわないか」といった、 使い方に対する不安が大きいのではないかと思います。
一方で、AIを使ってみたい人も多い
興味深いのは、AIを利用していない人でも、 AIそのものを否定しているわけではないことです。
コドモンの調査では、 生成AIを利用していない人の61.9%が、 今後について「活用したい」と回答しています。
不安はある。 でも、業務が少し楽になるのであれば使ってみたい。
保育現場のAIに対する現在の感覚は、 「抵抗がある」という言葉だけでまとめるよりも、 こうした状態に近いのではないかと思います。
新しいものだからこそ不安はあるけれど、 どのように使えるのか知りたいという気持ちもある。
その両方があるのではないでしょうか。
AIは少しずつ保育現場にも入ってきている
2026年3月にユニファ株式会社が実施した調査では、 全国の保育士・幼稚園教諭・保育関係者1,209人のうち、 33.4%に生成AIの利用経験がありました。
主な使い方として多かったのは、 「書類作成・文書・文章の下書き作成」が45.3%、 「表現の言い換え・文章校正」が42.6%でした。
また、一部の業務への導入も含めると、 AIの導入意向があるという回答は76.2%でした。
2024年のコドモンの調査とは、 調査対象や質問方法が異なるため、 数字をそのまま比較することはできません。
それでも、文章作成を中心に、 AIが保育の仕事の中で使われ始めていることは分かります。
特に書類作成は、 AIを活用しやすい仕事のひとつなのかもしれません。
保育だからこそ、慎重になることも大切
私は、保育現場でAIに対して慎重になること自体は、 悪いことではないと思っています。
保育では、子どもの姿や成長、 家庭に関する情報などを扱うことがあります。
また、AIが作った文章が、 実際の子どもの姿と合っているとは限りません。
個人情報保護委員会も、 生成AIサービスに個人情報を入力するときには、 サービスの利用規約やプライバシーポリシーなどを確認し、 入力する情報について適切に判断する必要があるとしています。
AIは便利だから何でも入力してよい、 出てきた文章だから正しい、 というものではありません。
便利さと同時に、 どこまで使うのかを考えることが大切だと思います。
AIを使うこと自体が目的ではない
保育現場にAIを取り入れることが、 目的になってしまう必要はありません。
AIを使うことで仕事が余計に複雑になったり、 確認する作業が増えたりするのであれば、 無理に使う必要もないと思います。
一方で、文章を考えるために長い時間悩んでいるのであれば、 その一部をAIに手伝ってもらうことで 負担を減らせる可能性があります。
子どもの姿を見ること、 その子に必要な援助を考えること、 日々の保育を振り返ること。
こうした部分までAIに任せるのではなく、 保育士が考えたことを文章として整理する部分を AIに手伝ってもらう。
そのくらいの距離感から始めてもよいのではないかと思います。
まずは「文章のたたき台」から
保育でAIを使ってみたいけれど不安がある場合は、 まず文章のたたき台を作るところから始めるのが 使いやすいと思います。
活動の内容や子どもの様子を、 個人が特定できない形で入力し、 ねらいや評価・反省などの文章を考える参考にする。
そして、出てきた文章をそのまま使うのではなく、 実際の子どもの姿や自分の保育に合わせて整えていく。
保育AIノートも、 そのような使い方ができるサービスを目指しています。
AIへの抵抗感を無理になくす必要はありません。
できることとできないことを知ったうえで、 自分の仕事の中で役立つ部分だけを使う。
これから保育現場でAIが広がっていくうえでは、 そうした使い方が大切なのではないかと思います。